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エレファントピア

エレファントピア

選挙

来る5月6日にシンガポールの総選挙が行われる。

シンガポールには一応4政党があるが、これまでのところ首相リー・シェンロン(と、その父シニア・ミニスター、リー・クアンユー)率いる与党PAP(ピープルズ・アクション・パーティ)が圧倒的に議席を独占している。
彼らの党は、ユニフォームが上下真っ白のシャツとズボン(スカート)なのだが、このいでたちには「クリーンであれ」という自戒の意味とメッセージが込められているらしい。

今回の選挙でも、もちろん与党圧倒有利と見られているが、選挙を前にして、おもしろい動きも見られる。
4月には全国民に税収に伴った返還金の配布が行われた。2月ごろに通知が来て、インターネットで税務署(?)にアクセスして登録すると、個人の銀行口座になにがしかの返還金が振り込まれる。カンボジアでは首相が演説のたびに聴衆にお金(と思われる袋)を配っているのを見てびびったが、オンライン化されているとは言えども、やってることは同じじゃん…。もちろん「選挙なのでヨロシク」とは言われないが、そんな意図は丸見えである。

もちろん野党叩きにも怠りがない。先週には野党WP(ワーカーズ・パーティ)の候補者の一人に選挙違反の嫌疑がかかった。彼は謝罪を述べたようだが、候補からは辞退することになるのではないか。

ところでシンガポールで最強にして最大のレフト・ウィングの方々と言えば、それはタクシー・ドライバーである。もしもシンガポールの政治を社会の下層、と言ったら言葉が強すぎるが、いずれにしても斜め45度から研究したい人がいたら、図書館や大学や官公庁に行っても無駄で、毎日毎日タクシーに乗りまくって、運ちゃんの話に耳を傾けるといいと思う。ドライバーさんたちは本当にシンガポールの社会の鏡である。景気が良かったときはまあまあの会社に勤めていて、リストラの憂き目に合ってドライバー職に就いているという人も多く、彼らの経済、政治、社会に対する目はシンガポール人の中でもビターで、しかも身に染みている。
そんなドライバーたちの口撃の的が、最大与党な訳である。ドライバーたちが新党を立ち上げる…というニュースも最近耳にした。達成するかどうかはともかく、そういうムーブメントというか気分が生まれているのは確かである。

野党の演説を聴きに出かけていった人によると与党の演説は、新聞でもニュースでも散々報道されているが、野党の演説はわざわざ行かないと聞けないらしい。いざ行ってみると、結構な人出だったりするという。

個人的には、これまでのシンガポールの歴史と業績を見てみると、PAPはよくやったし、またPAPのように強い一党独裁ではなれば、これほどスピーディにシンガポールが先進国の仲間入りを果たせたとは思えない。それはもちろん多くのシンガポール人が感じていることで、なんだかんだ言っても、やっぱり投票するならPAPになるのが現状だろう。
今の日本を見てみても(日本の場合は政治が政党だけで動くわけではなくて、もっと複雑だが)、A党が強行に政策を進めても、必ずそれに反対する(損をする)人々がB党を担ぎ出して、結局政策はなかなか速やかに進まない。シンガポール人は、「なんで日本ってそんなに政治が遅いの!?」とびっくりしているが、それはね~ミンシュシュギだからなんだよ~と言いたい。

話がそれたが、つまりいろいろあっても言われても、やっぱり強い与党はしばらく続くんだろうな~というのが大方の見方なのである。しかしと同時に、そろそろ我々にも頼れる野党が欲しいよな~という空気が生まれてきているのも確かである。イージー・ゴーイングなポーリアンのことだから、景気でも上向くとあっさり忘れてしまうかもしれないが、しかしながら、面白い兆候だよな。と思うのである。

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5月6日はシン加の統一選挙だった。
新聞、テレビ、ラジオなどからしか情報を得ていない人にとっては、与党圧勝の出来レースと映っていたようだが、この時期をローカルの生の声に囲まれて過ごした私は、ちょっと違った角度から面白く選挙戦を観察することができた。

まず、実際に起こっていることと、テレビや新聞などで報道されることの差を感じることができた。とは言っても、実際に野党の選挙演説を聴きに行ったわけではないのだが…。演説に行った人たちから聞く、その熱気が、メディアではきれいに無視されている。聞いてはいたけれど、これがこの国のメディアなのかあ。。と改めて思った。
以前、国際放送協会(?)とかなんとかいう組織の調査で、東南アジアで最も自由度のないメディアとして栄えある1位を獲得していたが、(そしてその結果に早速噛み付いていたが、)そうかー、このことだったのねー。

もちろんこういう差は日本でもどの国にでもあるだろう。ただ、シンガの場合は国が小さいから、その差に結構あっさり気付かれてしまうのだと思う。日本やアメリカは国土も広いし、遠くの人間に、バイアスのかかった情報を流すことなんて、簡単なのかも。

もう一つ勉強になったのが、この国でこれまで野党が全く育たなかったわけ。それは与党が本当に容赦ないかららしい。今回の選挙でも、議席の100%獲得を目指している。それって、議会政治の意味あるんだろうか?あと、選挙後に、野党の候補者を訴えて、逮捕したり、資産を凍結して、国にいられなくしたりするらしい。例えば一人の候補者に何人もが訴訟を起す。裁判で負ける。損害賠償が払えない。国にいられなくなって、国外逃亡とかなんとか。

もちろん時代も違う。今となっては先進国の仲間入りを果たしたと自負し、経済的にも安定と発展を保っているシンガだが、当時は政治的に横槍を入れられている場合ではなかったのだろうと想像する。アジアには政治的、経済的な安定を欠くまま、形ばかり美しいミンシュシュギが取り入れられて、政治家は選挙目的の政治劇と局地的なPR的事業に身をやつし、結局国民全体は貧しいまま、という国がわんさとある。(民主的な選挙が悪い訳ではないが。それと貧困から抜け出す戦略力は別では…と思う。)

しかし、そろそろ、いいんじゃないかなあ~という気分が国民の間に生まれてきているのを感じると、以前の日記にも書いた。
私に言わせれば、与党はそんなに必死にならなくても大丈夫なのでは?という気がする。そんな敵は全て殲滅せよ!みたいにならなくても、もう基盤はあるのではないだろうか?その余裕のなさというか、強硬さというか、懐の浅い様が、一部の国民の反感をいたずらに煽るのではないかと思う。

与党はこれまでこの国にとっていい仕事をしてきたと思う。それはこの国の富や安全や清潔さを享受している人なら、誰でも認めざるを得ないだろう。ただ、人間には「妬み」という心や「恐怖」に対する「恨み」や「反感」という心理がどうしても存在する。そういう部分を無視したり、押さえつけたりするようなやり方は、政治を、なんというか、こう着状態に持っていくのではないか。

とはいいつつ、本当はどんな方向がこの国のためになるのか私には分からない。(当たり前や)
もちろん一つ心配なのは、そういう専制が政治の自浄能力を奪うことだ。だからこそ御大は、与党の正装を真っ白の上下にしたのだろう。「Be pure」清くあれ、正しくあれ。誰にもつけこまれるな。それがいつまでも続くのであれば、それに越したことはない。しかし人は変わる、老いる、間違える、不慮の事故だってあるかもしれない。

この国は、今、最後に残された宿題に取り組んでいる。そんな感じなのかもしれない。

長々といろいろ書いたが、まあ圧勝なんだろうけどね。
圧勝してもらわないと、密告もあるから怖くってvv

(2006 May)


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